SCMシステムと生産管理システムの違い

このページでは、SCMと生産管理システムとの違い、SCMを活用した業務やシステムの選び方について解説しています。両者の特徴から違いについて確認していきましょう。

SCMとは

SCMとは「Supply Chain Management（サプライチェーンマネジメント）」の略で、商品・材料の仕入れから顧客に製品を届けるまで、一連のプロセスを最適化するための管理システムのこと。主にサプライチェーンの運用向けにつくられています。SCMを活用すると、サプライチェーンに関わる情報を一元的に管理できます。

サプライチェーンを最適化する

物流のグローバル化によって、世界中で多くのサプライチェーンが登場しました。その中で世界で競争優位に立つためには、いかに素早く顧客ニーズに気づき、急激な市場の変化にこたえられるかが重要です。

SCMは、需要予測や部品調達だけでなく、生産管理や販売管理、人員配置などサプライチェーンに関するあらゆる情報を管理できます。モノやお金の流れ全体をとらえて最適化できるため、市場の変化に迅速かつ的確に応えられるようになります。

それにより業務改善や効率化、コスト削減を実現し、目標達成や成果につなげることができます。

SCM導入のメリット・デメリット

SCMのメリット

SCMは、市場分析データをもとに需要予測を把握できるため、必要なときに必要なときだけ供給するジャストインタイムが行えるようになります。原材料や製品の在庫をリアルタイムで把握して、在庫を最適化することも可能です。

市場の状況や需要に合わせた在庫量を保つことで、過剰在庫や無駄な仕入れの発生を防ぎます。業務プロセスにおける課題を可視化できるため、業務効率の最適化によってコストカットを目指せます。

SCMのデメリット

SCMのデメリットとして挙げられるのが、導入初期のコストの増大です。サプライチェーン全体を一元管理するシステムですから、大規模なサプライチェーンほどコストがかかります。

システムを完全に活用するためには、業務プロセスの見直しや組織変革も必要です。従来のプロセスから大きく変更することに抵抗がある組織においては、導入から浸透までに時間と手間を要します。

SCMと生産管理の違いは？

SCMシステムと生産管理システムの違い

SCMシステムは、生産や原料の購買から顧客に製品を届けるまでの全体の流れを最適化するシステムです。それに対し生産管理システムは、生産工程の管理を中心としているもの。

生産管理システムは、SCMシステムに含まれる機能の一部であると言うと分かりやすいでしょう。

目的の違い

SCMは、製品の生産から納品まで、製造プロセス全体を最適化するための管理システムです。サプライチェーン全体の効率化とコスト削減を目指すことを目的としているため、製造プロセスには原材料の調達や在庫管理、物流、販売までの一連のプロセスも含まれます。

一方、生産管理は、製造業における製品の生産工程を中心に生産計画や工程管理、在庫管理などの最適化を目指すもの。製品を生産する体制にフォーカスし、生産効率を向上させることを目的としています。

コストの違い

SCMは、原材料の調達から納品までの各プロセスにおけるコストを評価します。製造はもちろん、在庫管理や物流管理、人員配置、販売までの一連のプロセスを最適化します。

それに対し、生産管理システムがアプローチするのは、あくまでも製造業務内部におけるコストです。製品を1つ製造するにあたってかかるコストを低減させることを目的としています。

SCMと生産管理のどちらも業務の効率化とコスト削減を追求する点では共通していますが、最適化を図る範囲で違いがあります。

SCMの業務について

SCMによって行う主な業務は、サプライチェーンの管理と最適化の2つです。これらは、SCMの持つ機能によってサポートされます。

SCMシステムの機能は、PDCAサイクルに沿って構成されています。予定や計画段階（Plan）では需要予測や計画を、実行段階（Do）では実際の業務プロセスごとの管理を、振り返り段階（Check）では実行・実施した計画の結果を評価し、分析・改善段階（Action）では収集したデータを分析して次の計画やアプローチを支援します。

このように、PDCAを実行しながら管理と最適化を繰り返すことによって、組織の進化と利益を追求していきます。

SCMの管理業務

業務やプロジェクトに適切なツールや方法を活用して、業務ごとのプロセスが計画に沿って予定通り進行されているかを確認し、状況や課題に合わせて管理します。コスト削減や利益向上を図るためには、適切な在庫管理も不可欠です。市場分析データをもとに需要予測を立てて、過不足なく在庫を維持することで成果の最大化を目指します。

SCMの最適化業務

業務やプロセスで発生している無駄を見つけて排除し、より効率的に生産するための方法を模索する業務です。コスト削減や納期の短縮、顧客満足度アップにつなげて成果向上を図ります。新しい技術やツールの導入、業務プロセスの見直しと再設計も含まれます。

SCMシステムの選び方

SCMシステムは、大きく3つのタイプに分かれます。それぞれの強みや特徴を知っておくと、自社で導入すべきSCMを見つけやすくなります。

マルチ対応タイプ

PDCAの各サイクルに対応した多くの機能を持つタイプです。必要に応じて計画・実行・振り返り・改善機能を組み合わせてプロセスを最適化できるため、業種や業態を問わず幅広く応用できます。

マルチに対応できるタイプの製品には需要予測や販売計画といった需給領域と生産計画や生産スケジュールといった供給領域に沿ったものがあり、これらをニーズに応じて組み合わせることが可能です。

予定や計画に特化したタイプ

需要予測や発注計画など、予定や計画段階のプロセスに強みを持つSCMです。「需要予測の精度を高めてより在庫を最適化したい」「急な計画変更に柔軟に対応できるようになりたい」といった場合に向いています。

予定・計画のみならず実行機能や分析機能も有していますが、これらは予定・計画のプロセスを強化した場合により効果を発揮します。

業界に特化したタイプ

小売業や物流業、食品業など、特定の業界に必要な機能がパッケージ化されているSCMです。ひと口にサプライチェーンと言っても、業種や業態によって原材料や製品、物流プロセスなど、顧客に供給するまでの状況は大きく異なります。業種に特化したSCMがあれば、はじめから業務に最適なシステムが構成されているためマネジメントがしやすくなります。

今後のSCMの重要性

SCMシステムは、需要予測や在庫管理、販売管理などサプライチェーン全体の状況を可視化して最適化できるツールと分かりました。SCMの技術は今なお進化を続けています。最近では製品やプロセスをデジタル上で再現し、シミュレーションしながら最適化を行える「デジタルツイン」という技術も登場しています。

今後も製造業のみならず、多岐にわたる業種・業態のサプライチェーンの課題を解決するためにSCM技術が進歩していくと考えられます。