ここでは、製造業においてERP導入の失敗は多いのか、生産管理システムとどちらを選ぶべきかなどをまとめています。
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ERPパッケージは、日本の製造業に合わないとされています。実際に、ERP導入によって生産が混乱したという事例も発生しているため、採用するかどうかはしっかりと考えなければなりません。
ERPパッケージが日本の製造業に適さない理由は、ERPの採用するMRP(製造実行システム)の考え方にあります。
MRPは「資材所要量計画」の略称であり、製品の製造で使用する部材や部品を準備するために生み出された所要量計算ロジックです。
製造業では、製品を作るにあたり必要な数量の部材や部品を外部からちょうど良いタイミングで調達しなければなりません。事前にすべての部材を手配しておけばいつでも製造業務ができますが、その反面で部材在庫が発生する可能性があります。
もちろん、部材をきちんと調達できず在庫不足に陥ると、生産ラインが止まるなどのトラブルにつながりかねません。MRPでは、生産前に作成した部品表や工順表から必要な部材の数量と調達のタイミングを計算するため、部材や部品の在庫最小限に抑えられるでしょう。
業務効率の向上に適していると思われがちですが、MRPには欠点も存在します。それは、生産計画の変更に対応できないという点です。MRPは柔軟性に欠けるため、製造業においては導入に失敗したと感じることがあるかもしれません。
製品の製造にあたって、どの材料をどれくらい用意する必要があるかを計算するMRPは、あくまでもモノを作るための所要量を算出するシステムです。そのため、生産にかかる時間は度外視されています。
生産工場では複数の製品を製造しているケースがほとんどのため、リソースを自由に使用できるわけではありません。例として、納期の1週間前に部材を手配すれば「確率的には問題ない」と考えた場合、この1週間は「標準リードタイム」と呼ばれます。
製品が完成するまでの工程として、部材から製品を作るまでに3週間かかる場合、実際の作業時間が3日しかありません。残りの日数は工程間待ち時間となってしまいます。
標準リードタイムではなく正味時間をベースとして、作業における待ち時間を排除すれば、製造リードタイムは3日です。この考え方は「ジャストインタイム」と呼ばれます。
一方、MRPを使用した際の標準リードタイムの決め方は、工程通過時間のアベレージを採用した場合、ジャストインタイムよりも長くなる可能性が高いです。それに伴い、製造リードタイムも長くなってしまうため、業務の効率化や短納期の実現は極めて困難です。
仮に製造リードタイムを長くしても、必ずしも実行可能性が保証されるとは言い切れません。作業が集中してしまった場合、優先順位によっては後回しにされる可能性があるからです。
もちろん、いくら作業が順調に進んでいても、計画立案の後にマシントラブルや飛び込みロットが原因で実行不可能になるケースもあるでしょう。MRPで問題になるのは、計画立案の時点で実行不可能が予想される場合です。
標準リードタイムの決定後はMRPが無限能力を前提としており、標準リードタイムが大幅に延びる可能性があります。工場の能力を度外視してしまうため、「本来であればもっと早く作業を終わらせられたはず」などのトラブルを招くでしょう。
MRPの問題点を改善するための対策として、「負荷」という概念の導入が挙げられます。MRPは計画時にタイムバケットを設定します。タイムバケットは1つの期間を区切る単位です。
MRPではタイムバケットの中に作業を山積し、一定の負荷水準を超過したら1つ前のタイムバケットにずらす、という方法で計画を立てていきます。この方法は実行可能性こそ改善されるものの、製造リードタイムを大幅に延ばしてしまうというデメリットを持っているのです。
結論からお伝えすると、必ずしもERPより生産管理システムのほうが良いというわけではありません。なぜなら、システムを導入する際、企業によって利用の目的や管理を希望する業務範囲が異なるからです。
そのため、自社でどの業務を優先的にシステム化したいのかを検討したうえで、2つのシステムを比較するのがおすすめです。企業の課題や生産品目はもちろん、生産管理の業務フローなどをもとに導入の優先度を決定してください。
なお、ERPは製造業の要となるサプライチェーンのトータル管理が可能で、比較的大規模な企業に適しています。一方で、生産管理システムはERPと比べて機能がシンプルで、中小企業をターゲットとしているものが多く販売されているでしょう。
また、製造工程が複雑な場合や生産形式が特殊な場合も、生産管理システムの導入が向いています。生産管理システムを使ってからERPの導入を検討するなど、段階的な導入は現場スタッフの混乱を防ぐのに効果的です。
オペレーションごとに必要な機能が異なるため、自社で取り扱う製品や業務フローにシステムがあっているかを確認するのが重要です。業種業態や自社の規模、生産方式や製造品目などから「どんな機能があれば作業効率が上がるか」を考え、システムの導入を決定してみてください。
ERPにはさまざまなモジュールがあるため、すべてを使用するよりも「どれをどのように使用するか」に着目すると良いでしょう。見込み生産を行う場合は、即時的な材料調達や効率的な生産計画を立てるのに有効です。
同じく見込み生産を行う企業で生産管理システムを導入する場合、「需要予測ができるか」を確認しなければなりません。需要予測ができれば適切な販売計画を立てられるため、小日程計画~大日程計画の立案が可能かのチェックを忘れずに行いましょう。
ERPならびに生産管理システムには、クラウド型とオンプレミス型という2つの運用方法があります。
クラウド型とは、インターネットを介してソフトウェアやシステムを利用する、中小企業向けの形式です。自社でサーバーを用意する必要がなく、インターネット環境が整っていればどこにいてもシステムを使えます。
オンプレミス型は自社のサーバーを使用する形式で、システムカスタマイズ度が高いのが魅力です。複数のソフトウェアとの連携も可能なので、中~大規模な企業に適しています。
万が一システムにトラブルが発生した場合、スピーディーな対応をしてもらえるかどうかも需要なポイントとなります。特に、システム導入直後やアップデート時は問題が発生しやすいでしょう。サポート体制が万全であれば、不具合が起きた場合でも業務への影響を最小限に抑えられます。
また、業務サポートとして、現場での使用方法のレクチャーの有無なども確認してください。せっかくシステムを導入しても操作方法が分からなければ、業務効率の向上における十分な効果を発揮できない可能性があります。
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